2010年2月27日のチリ地震津波
2010年2月27日に発生したチリ地震(35.846°S, 72.719°W, Mw = 8.8, 06:34:14 (UTC) USGSより)の津波シミュレーションを実施しました. 断層モデルとして,USGSのWphaseインバージョン解析によるモーメントテンソル解(震源メカニズム:走向16°,傾斜14°,すべり方向104°)を参照して一枚の断層面を設定しました(図1).断層の長さと幅を400 km×100 kmとし,断層面上の平均すべり量を10 m,断層上端の深さを4 kmと仮定しました. 津波の初期条件として,設定した断層を用い海底地形の静的変位をOkada(1985)の式で計算しました. 津波伝播を計算するため,線形長波の式を差分法で数値的に解きました(Satake, 1995). 使用した海底地形データは, GEBCOの1分グリッドデータを2分で再サンプリングしたデータです. 津波シミュレーションによる最大波高分布, DART(深海底に設置された津波計)及び 検潮所における波形の比較を図2に示します.波形の一致具合は良好で,地震学的な解析から推定される低角逆断層モデルで,観測された津波を概ね説明できると考えられます. 図3では,津波が太平洋を伝わる様子を見ることができます.
図1 津波波源モデル
設定した断層モデル.等高線の間隔は0.5 mで赤線が隆起,青線が沈降を示す.赤丸は,本震後約1日間に発生した余震を示す(USGSより).
図2 計算された津波の最大波高分布
計算された津波の最大波高分布と波形の比較.赤線が観測津波波形,青線が理論波形.
図3 津波が伝播する様子(スリックするとアニメーションが始まります).
赤は押し波,青は引き波を表す.
文責:藤井雄士郎(建築研究所 国際地震工学センター),佐竹健治(東京大学 地震研究所)
参考文献 Okada, Y. (1985), Surface Deformation Due to Shear and Tensile Faults in a Half-Space, Bull. Seismol. Soc. Am., 75, 1135-1154.
Satake, K. (1995), Linear and Nonlinear Computations of the 1992 Nicaragua Earthquake Tsunami, Pure and Appl. Geophys., 144, 455-470.
最終更新日 2010/3/1