2010年12月22日に父島近海で発生した地震の遠地P波の高周波震動継続時間とマグニチュード
遠地で観測されるP波の高周波成分は、地震の震源時間(断層面上の滑りが始まってから終わるまでの時間)とよい相関を示し(Hara,
2007a)、震源時間の目安になる。高周波震動継続時間と最大変位振幅から地震のマグニチュードを計算する方法を考案した(Hara, 2007a)。この方法は、M9級の巨大地震に適用可能、マグニチュードを決めるのが困難な津波地震に適用可能(Hara, 2007b)といった利点を有する。
この方法を2010年12月22日に父島近海で発生した地震(発生日時12月22日02時20分頃、震源位置:
北緯27.5度、東経143.4度、父島の東北東130km付近、深さ約10km。気象庁による)に適用した結果を以下に記す。解析には全地球的に設置された観測点の複数のデータを使用した。図1は高周波震動継続時間の測定例である。観測点は、カナダのFlin Flon, Manitobaに設置された広帯域地震観測点である。震源からの距離は約9000km。測定された高周波震動継続時間の中央値は32.4秒であった。震源時間は30秒程度であったと推定される。
高周波震動継続時間と最大変位振幅から求めたマグニチュードは7.61であった。気象庁による7.4、米国地質調査所が求めた7.4、グローバルCMTプロジェクトが求めた7.5と整合的である。
図1:高周波震動継続時間の測定例。観測点は、カナダのFlin Flon, Manitobaに設置された広帯域地震観測点である。震源からの距離は約9000km。上の波形は観測された速度記録。2番目は2-4
Hzのハイバンドパスフィルターを掛けた結果。下の図は2番目の波形の移動平均をとった時系列で、「A」が地震の到着時刻、「F」が高周波震動の終わりを表している。
参考文献
Hara, T.,
Measurement of duration of high-frequency energy radiation and its application
to determination of magnitudes of large shallow earthquakes, Earth Planets Space, 59, 227–231, 2007a.
Hara,
T., Magnitude determination using duration of high frequency energy radiation
and displacement amplitude: application to tsunami earthquakes, Earth Planets Space, 59, 561–565, 2007b.
(国際地震工学センター 原 辰彦)
Last
Updated: 2010/12/22