2011年3月9日に三陸沖で発生した地震の遠地P波の高周波震動継続時間とマグニチュード

遠地で観測されるP波の高周波成分は、地震の震源時間(断層面上の滑りが始まってから終わるまでの時間)とよい相関を示し(Hara, 2007a)、震源時間の目安になる。高周波震動継続時間と最大変位振幅から地震のマグニチュードを計算する方法を考案した(Hara, 2007a)。この方法は、M9級の巨大地震に適用可能、マグニチュードを決めるのが困難な津波地震に適用可能(Hara, 2007b)といった利点を有する。

この方法を2011年3月9日に三陸沖で発生した地震(発生日時3月9日11時45分頃、震源位置: 北緯38.3度、東経143.3度、牡鹿半島の東160km付近、深さ8km。気象庁による)に適用した結果を以下に記す。解析には全地球的に設置された観測点の複数のデータを使用した。図1は高周波震動継続時間の測定例である。観測点は、中国のQiongzhong, 海南省に設置された広帯域地震観測点である。震源からの距離は約3840km。測定された高周波震動継続時間の中央値は51.6秒であった。

高周波震動継続時間と最大変位振幅から求めたマグニチュードは7.59であった。グローバルCMTプロジェクトが求めた7.5、名古屋大学地震火山・防災研究センターの震源過程モデルから得られた7.5と整合的であり、気象庁による7.3、米国地質調査所のWphaseの解析による7.3より少し大きい。

 

1:高周波震動継続時間の測定例。観測点は、中国のQiongzhong, 海南省に設置された広帯域地震観測点である。震源からの距離は約3840km。上の波形は観測された速度記録。2番目は2-4 Hzのハイバンドパスフィルターを掛けた結果。下の図は2番目の波形の移動平均をとった時系列で、「A」が地震の到着時刻、「F」が高周波震動の終わりを表している。

 

参考文献

Hara, T., Measurement of duration of high-frequency energy radiation and its application to determination of magnitudes of large shallow earthquakes, Earth Planets Space, 59, 227–231, 2007a.

Hara, T., Magnitude determination using duration of high frequency energy radiation and displacement amplitude: application to tsunami earthquakes, Earth Planets Space, 59, 561–565, 2007b.

 

国際地震工学センター 原 辰彦

Last Updated: 2011/03/10