2004年10月23日新潟県中越地震の破壊の様子(暫定)


気象庁が公開している強震動記録と遠地実体波を使用した解析結果(暫定)についてまとめました. このWEBに公開した解と比べると,最大すべり量が 3.7m と小さめに求まる点と, 地表付近で多きな滑りが得られる点が異なります. この結果は,速度構造等をキャリブレーションした結果です.(2004/11/27)

結果(PDF)


破壊の伝搬の様子(アニメーション)

破壊が,東側に伝搬していく様子が分かる.

2004年10月23日17時56分に新潟県中越地方にて,気象庁マグニチュード6.8の地震が発生しました.ここでは, IRIS-DMCが収集している遠地実体波とK-net Kik-net (防災科学技術研究所)で観測された近地強震動記録を,ABICを考慮した波形インバージョン法(Fukahata et al., 2003, 2004; Yagi et al., 2004) に適用して,断層運動の詳細を求めました.解析の結果,地震は,急激に破壊が開始し,震源近傍で約6m近くの滑りが発生したことが分かりました.また,規模の大きな余震は本震の破壊で割れ残った領域で発生している事が分かりました.

結果

地震モーメント Mo = 9.2 x 10**18 Nm (Mw 6.6);
破壊継続時間 T = 10 s;
(走向, 傾斜, すべり角) = (210, 54, 89)
震源: (緯度 = 37.30N, 経度 = 138.84 E , 深さ= 9 km).
(震源は,遠地実体波と近地強震動記録を同時に説明できる点をグリットサーチした。)
最大すべり量 = 6 (m)
主破壊は,震源から地表かつ東側に向かって進行した.得られたモーメントマグニチュードは,気象庁マグニチュードより0.2も小さい.この地震が開放したエネルギーは,2003年7月26日 宮城県北部で発生した本震の約8倍にもなる.本震の破壊領域は,余震分布と比較して狭い.規模の大きな余震は本震の破壊領域の端近傍で発生している.

コメント: 近地強震動記録と遠地実体波を同じ重みで計算すると,近地強震動記録を説明する事が困難でした.そこで,近地強震動記録を説明するために,これらの記録の重みを大きくしました.そのため,すべり量と地震モーメントを過大評価している可能性があります.例えば,NIG019の水平動成分の重みを下げると,最大すべり量は3〜4m程度,モーメントマグニチュードは6.5となります.今回観測された多くの強震動記録がどの程度信用できるのかは,強震動と建物の被害を調べる上でも,断層運動を調べる上でも,極めて重要であり,十分な調査・議論が必要であると考えています.
近地強震動記録を信じる限り,波形を説明できる震源は他の機関が決定した震源より数km 西寄りになります.これは,震源より西側の観測点は厚い堆積層に覆われているために,実際の震源より,系統的に東側に決定されている可能性があることを示唆しています.

文責 建築研究所・国際地震工学センター 八木勇治 (yagi@kenken.go.jp)


すべり量分布


(余震分布は防災科研が決定した速報値を使用した.ここで余震分布と比較するために,本震の震央は防災科研が決定した速報値にプロットしている.)

断層面上の破壊分布と震源時間関数


図: (左上) 震源メカニズム解; (右上) モーメント開放履歴; (下) 断層面上のすべり量分布.

波形の比較


図: 観測された波形(黒線)とモデルによって再現された波形(赤線)の比較です。(a) 遠地実体波:観測点コードの下に、各観測点最大振幅の値(単位ミクロン)を表示しています。波形のは、P波の10秒前から表示しています。(b) 近地強震動記録:観測点コードの下に、各観測点最大振幅の値(単位CM)を表示しています。波形のは、P波の5秒前から表示しています。(フィルタ 0.1〜0.5 Hz)

図 解析に使用した観測点分布。

参考文献

Fukahata, Y.; Y. Yagi; M. Matsu'ura, Waveform inversion for seismic source processes using ABIC with two sorts of prior constraints: Comparison between proper and improper formulations, GRL, 30, 10.1029/2002GL016293, 2003.

Fukahata, Y.; A. Nishitani; M. Matsu'ura, Geodetic data inversion using ABIC to estimate slip history during one earthquake cycle with viscoelastic slip-response functions, Geophys. J. Int., 156, 140-153, 2004.

Yagi, Y. ; T. Mikumo; J. Pacheco, Source rupture process of the Tecoman, Colima, Mexico earthquake of January 22, 2003, determined by joint inversion of teleseismic body wave and near-field data (PDF), in print, Bull. Seism. Soc. Am., 2004.


リンク


Last Updated: 2004 Oct. 25