2003年9月26日十勝沖地震(Mjma 8.0)の破壊伝搬の様子


EPSに投稿した論文です。(2004/2/24)
Yagi, Yuji, Source rupture process of the 2003 Tokachi-oki earthquake determined by joint inversion of teleseismic body wave and strong ground motion data, submited to Earth Planet and Space, 2004.

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速度構造を、余震の記録を説明できるように補正して計算し直した結果をアニメーションにしました。 興味がある方はダウンロードしてください。容量は1Mb程度です。(2004/1/28)

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国際地震工学研修40周年記念講演会が2003年11月28日(金)に開催されます。 この講演会のポスターセッションで、2003年十勝沖地震の再解析の結果を発表します。 発表ポスター(PDF)をダウンロードできる様にしました。8.5Mbと大きいファイルです。お気を付け下さい。

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現在、EPSの特集号に投稿準備中です。今月中にWEBにアップする予定です。


遠地実体波と近地強震動記録を使用した波形インバージョン (NEW)

2003年9月26日04時50分頃(日本時間)に十勝沖で気象庁マグニチュード (Mjma) 8.0の地震が発生しました。 同地震の震源メカニズム解は、プレート境界面で発生する、典型的な逆断層型の地震です。 IRIS-DMCが収集している波形記録から、観測点分布を考慮して12点の遠地実体波(P波)を、防災科学技術研究所が運営しているK-netから12点を解析に使用しました。遠地実体波は近地強震動記録に比べて、構造の影響を評価することが容易で、震源全体のモーメント解放履歴やモーメント解放領域の深さを決定するのに優れています。これに対して近地強震動記録は、観測点近傍における断層の動きの詳細な情報を有しており、時空間の分解能が高いです。両者を同時に使用することにより、安定かつ詳細な震源過程の推定ができます。今回は、上記のデータをABICを考慮した波形インバージョン法(Fukahata et al., 2003a,b , Yagi et al., 2003)に適用して、破壊の様子(震源過程)を求めました。また、速度構造は、永井(2001)で仮定している速度構造を使用しました。

遠地実体波のみの解析結果は、ここ をクリックしてください。

結果

地震モーメント Mo = 1.57 x 10**20 Nm (Mw 8.1);
破壊継続時間 T = 55 s;
(走向, 傾斜, すべり角) = (249, 15, 130)
震源: (緯度 = 41.78N , 経度 = 144.08E , 深さ= 15 km).
(震央は気象庁の速報値を使用しました。震源の深さは最も観測波形を説明できる破壊開始点の深さです。)
最大すべり量 = 6.2(m)

解説(2003/09/26):
地震波形を説明できる破壊開始点の深さは、15kmと気象庁が決定している値よりかなり浅く求まります。破壊は、北西側に約100km伝搬しており、最大の滑り量は6.2mとなります。複数の滑り量が大きな領域(アスペリティ)が襟裳岬近辺で確認することができます。このアスペリティの中心の深さは、約23kmとなります。 解放したエネルギーは、兵庫県南部地震の約75倍にもなります。
遠地実体波で解析した結果と比較すると、地震モーメントが大きく求まります。これは、速度構造を変えたことと、震源の深さを変えたことが原因として考えられます。

追記(2003/09/27):
気象庁が2003年十勝沖地震と命名したのに伴い、タイトルを変更しました。
破壊継続時間が55秒と長いために、観測された地震動は、長周期の波が卓越しています。

追記(2003/09/28):
余震分布(気象庁一元化震源;地震発生後約19時間以内)とすべり量分布の比較の図と、断層面上における応力変化と余震分布の比較の図をあらたに掲載しました。 大きな余震は、すべり量の大きな領域の縁で発生しているように見えます。

追記(2003/09/30):
本研究で得られた、すべり量分布を地図上の描くシェルスクリプト(GMT使用)と、緯度・経度・すべり量を示したファイルをダウンロードできます。
シェルスクリプト(slip_on_map.csh)
すべり量ファイル(md.dat)
上記のシェルを使用して得られるPSファイル(slip_on_map.ps)
(注意): 上記のファイルはご自由に使用しても構いませんが、使用する際には、「八木(2003)の結果を使用した。」と明記してください。

文責 独立行政法人 建築研究所・国際地震工学センター 八木勇治 (yagi@kenken.go.jp)


本震のすべり量分布


図: すべり量分布。大きな滑りは襟裳岬近傍で発生している。


本震のすべり量分布と余震活動との比較


図: すべり量分布。大きな余震は、すべり量の大きな領域の縁で発生しているように見える。震源は気象庁一元化震源を使用しました。規模が大きいほど 震源を大きくプロットしています。


本震の断層滑りに伴う応力変化と余震活動との比較


図: 今回仮定した断層面上における剪断応力変化(MPa)と余震分布。青は剪断応力が減少した領域、赤は剪断応力が増加した領域。震源は気象庁一元化震源を使用した。


断層すべりのスナップショット


図: 2秒刻みの断層すべりのスナップショット。破壊開始からはじめの14秒は震源近傍で滑りが発生し、その後、破壊は北西方向に伝搬する。最も地震モーメントを解放した時間は、地震発生後約20秒後である。破壊先端の伝搬の平均速度は約3km/secである。


すべり量分布と震源時間関数


図: (左上) 震源メカニズム解; (右上) モーメント開放履歴; (下) 断層面上のすべり量分布.


波形の比較 (遠地実体波)


図: 観測された波形(黒線)とモデルによって再現された波形(赤線)の比較です。 観測点コードの下に、各観測点最大振幅の値(単位ミクロン)を表示しています。波形は、P波の10秒前から表示しています。

波形の比較 (近地強震動記録)


図: 観測された波形(黒線)とモデルによって再現された波形(赤線)の比較です。 観測点コードの下に、各観測点最大振幅の値(m/s)を表示しています。波形は、初動の5秒前から表示しています。長周期ノイズが大きな観測波形(HKD091EW, HKD100EW)を除けば、波形の一致は良いです。


解析に使用した観測点分布


参考文献


Fukahata, Y., A. Nishitani and M. Matsu'ura, Geodetic data inversion using ABIC to estimate slip history during one earthquake cycle with viscoelastic slip-response functions, Geophys. J. Int., accepted 2003a.

Fukahata, Y., Y. Yagi, and M. Matsu'ura, Waveform inversion for seismic source processes using ABIC with two sorts of prior constraints: Comparison between proper and improper formulations, GRL, 30, 10.1029/2002GL016293, 2003b.

永井理子・菊地正幸・山中佳子,三陸沖における再来大地震の震源過程の比較研究 - 1968年十勝沖地震と1994年三陸はるか沖地震の比較-,地震2,54, 267-280, 2001

Yagi, Y. ; T. Mikumo; J. Pacheco, Source rupture process of the Tecoman, Colima, Mexico earthquake of January 22, 2003, determined by joint inversion of teleseismic body wave and near-field data (PDF), submited to Bull. Seism. Soc. Am., 2003.


リンク


謝辞 伊藤喜宏氏(防災科学技術研究所)には、破壊開始点の議論に付き合って頂きました。記して感謝の意を表します。


Last Updated: 2003 November 19