◎表の各欄についての注釈

1.記号(SQ)
 冒頭に記号 ? + - * がついているものがある.
 ? は日時の誤記のため別に記載されている地震と同じである可能性が強いもの,実在性が疑問であるものなどにつけてある.実在しないことがほぼ確かなものも,誤りが自明である場合を除き ? を付けて載せてある.日本の地震については,「新収日本地震史料」 に * 印(不確実の印)のついているものは ? をつけた.? がついている地震には採録すべきではないものが多いが,すべてを捨てるわけにもゆかない.カタログAをも参照して作られた新しいカタログBの中に,Aに載っており当然Bにも載るはずの地震が見あたらないことがある.なんらかの理由でBが採用しなかったのか,不注意で脱落したのかわからない.このようなとき,その地震を ? を付けて残すか,そのまま残すかはBがどのくらい注意を払って作られたものかの判断にもよる.? が付いている地震は通常は無視するほうがよいだろうが,? にもいろいろな種類・程度のものがある.一方,? が付いていないからといってすべて確実な資料とはいえないことはもちろんである.このように誤りあるいは著しく不正確な地震でも記入したのは,そうしておかないと,その地震が調査不十分のため漏れていると誤解されてしまうおそれがあるからである.
 + は前行または次行の地震と同じものであるが,理由があって別行にしたことを示す.本表は1地震1行の原則を守り,Remarks欄のスペースが足りないときは重要な情報でもやむなく切り捨てているが,例えば日本に大津波をもたらした南米の地震に日本の被害等を記載する(日本の被害地震を検索すると出てくるようにする)には別行にせざるをえなかった.
 - はWDC-AのカタログではM≧7.5としているが,Abe(1981), Abe and Noguchi(1983a, b)による表面波マグニチュードMs,実体波マグニチュードmB,HarvardグループによるCMT解から換算したモーメントマグニチュードMw(1977年以降)のいずれもが7.5に達しておらず,かつ被害の記事が他の文献を含めて見出されない地震を示す.無被害でM<7.5の地震は本カタログには含まれないはずだが,WDC-Aカタログが過大評価されたMを採用したため入っている.

2.出典(REF)
 出典欄は参照した文献の種別を表し A,C,E,G,I,J,K,M,N,P,R,S,T,U,V のいずれかの文字が1ないし4個記されている.ただし,C,J,U は原則として単独で用いられている.C,J,U の文献は,それぞれ,中国,日本,米国の地震についての資料であり,他国で刊行された資料を混ぜないほうがよいと考えられるからである.文献が5種類以上あるときは,主な4種類を示した.なお,2種類以上あっても元は同じ資料から出ている場合が少なくないから,独立の資料が複数あるとは限らない.それぞれの文献からどの地震を採用するかの基準は,文献ごとに異なる.ただしある文献では基準に満たなくても他の文献の基準を満たすので採用された地震には,基準を満たしていない文献の内容(たとえば震央位置,M)も採用している(あるいは参考にしている)ので,出典欄に文献の記号が載ることはある.出典欄に示したある文献はその文献にその地震が掲載されており参考にはしたが,本表の各欄はそれ以外の文献からの資料ですべて埋められ,その文献の記事は使用されていない場合もありうる.なおJ(日本の地震)については地域を示すaからmまでの記号(表1)が4列目に入れてある.

表1.日本の地震の地方分類記号(被災地ではなく震央の位置する地域)
a北海道(南千島を含む)の太平洋沿岸および沖合
b北海道およびその日本海・オホーツク海岸沖合
c東北地方太平洋沿岸および沖合
d東北地方およびその日本海岸沖合
e関東地方およびその沖合,山梨県~伊豆半島~伊豆諸島周辺
f信越地方およびその日本海岸沖合
g東海~北陸地方およびその日本海岸沖合
h東海沖~南海道沖
i近畿地方およびその日本海岸沖合
j中国・四国地方およびその日本海岸沖合
k九州東方沖(日向灘)~奄美大島北方
l九州およびその北方~西方沖合
m琉球列島周辺
s遠地地震からの津波

○A: Ambraseys(1962ab, 1968, 1985, 1988, 1989, 1992, 1995),Ambraseysほか(1982, 1983, 1986ab, 1987, 1989, 1990, 1994, 1995, 1996, 2000, 2001)その他 Ambraseysが著者(の一人)である論文.
 Ambraseysらは中近東をはじめ世界各地の歴史地震の調査研究を進めている.なおAmbraseys and Finkel(1995)はトルコの地震に関する重要な文献と思われるが,まだみていない(入手困難).

○C: 顧ほか(1983, 1984),謝ほか(1983-1987),その他,中国の地震に関する中国および日本の文献.
 顧ほか(1983)は,3188+46(追加)-7(削除),他に付録(資料が疑わしいあるいは不十分なもの)として 353+11(追加)-8(削除),計3583個の地震を収録し,震央位置,震央における震度,Mの推定値が記載されている.無番号の1831B.C.を除き,1900年までの590個はすべて被害地震であり,すべて本表に採用した.20世紀についてはM4以上の地震および海域の地震を含めているので無被害の地震が多く掲載されているが,本表にはある程度被害のある地震(震度7以上あるいは死傷者の記事あり)のみ選んで採用した.1900年以降のLは中国標準時で北京時間といってよい.顧ほか(1984)は続編(1979年までの分)である.
 謝ほか(1983-1987)は,総計5000ページに近い大著で被害のない地震の史料も記載されている.1901年以前については史料のみであり,震央位置等の表はない.顧ほか(1983)に掲載されていない被害地震若干をこれから補った.
 「理科年表」 1976-1980年版に掲げられている中国大地震年代表は,慶松光雄の長年の研究成果を主体としたもので参考になったが,この表にある資料はM値を含めほとんど採用していない.
 国家地震局震害防御司(1995),楼(1996)はほぼ顧ほか(1983, 1984)によっているが,これに載っていない被害地震もいくつかある(西蔵,新疆など辺境の地のものが多い).その他,中国のいくつかの文献を参照した.
 中国の文献には載っていない中国の被害地震,あるいは,載っていても被害の記載のない地震が Milne(1911)など欧米の文献にかなり多数見出されるが,これらは採用しなかった.ただし,WDC-Aカタログは全地震採用する方針をとったので,この中に含まれているが中国の資料にはない中国の地震は種別 G の地震として入っているが,その多くには ? が付いている.

○E: Sieberg (1932).
 Siebergの 「Erdbebengeographie」 は世界を100以上の地域に分けて,1930年ころまでの主要な地震を記載している.この中から (1)死者のでたもの,(2)Zerstorung(破壊)という表現が使われているもの(例えばzerstorendes Erdbeben,ただし,軽いなどの形容詞がついている場合を除く),(3)Schaden(被害)という表現が,重大な等の形容詞をつけて使われているもの(例えばschweres Schadenbeben, kraftigen Gebaudenschadenなど),(4)津波の記事のあるもの を採用した.なお,Sieberg(1930)も参照した.

○G: WDC-A刊行のカタログ.Ganse and Nelson(1981, 1982),Raid and Meyers(1985),WGDC/WDC-A(1989),Dunbarほか(1992),NEIC/WDC-A(Web Site, 2001春現在).
 Ganse and Nelson(1981,1982)のカタログは被害額が1979年の価値で100万ドル以上とみられるもの,または死者10人以上,またはM7.5以上(Mが与えられていない地震については震度10以上)の地震を159編の資料から収集したものと称しているが,それより小さい地震(特に米国のもの)も若干含まれている.被害は物的被害を地震当時の金額(100万US$単位)で示してあるが,被害額が与えられないものについては,推測で次の5段階で分けたという.insignificant,limited($100万以下),moderate($100万-500万),severe($500万-2500万),extreme($2500万以上).金額を推測する情報に乏しいときは,limited は slight,minor,lightと,severe は major,extensive,heavyと,extreme は catastrophicと同義とみなすそうである.しかし G では,かなりの被害があった地震で被害欄が空白になっているものも少なくない.このカタログは約2400個の地震を収録しているが,不審と思われる数字,地名等がかなりあるが,元の資料がそうなのか編集の際の誤解・誤記なのかわからない.
 Raid and Meyers(1985)は中東地域についての同型式のカタログである.
 WGDC/WDC-A(1989)はGanse and Nelson(1981)カタログの増訂版(MTとして販売),Dunbarほか(1992)はそれをさらに増訂したもので,採択の基準はGanse and Nelson(1981)と同じであるが地震数は約4000個となっており,これまでの不審な部分もかなり改善されている.NEIC/WDC-AのWeb SiteでみられるSignificant Earthquakes World Wide (NOAA)は2150 B.C.から1994年までの約3500個の地震のすべてについて1地震1行で日時,震央の緯度経度,M,最大震度,津波などが示されているが,地名は示されていない.
 本表には上記カタログ所載の全地震を採録した.ただし C,J,U の記号をつけて採録した地震には上記カタログの情報は使用せず,記号 G もつけない.G では7.5以上のMが与えられている地震を被害とは関係なく採用しているが,Mの値にはかなり過大評価されているものがあり,そのためM7.5未満の無被害地震がかなり紛れ込んでいる.明らかに過大評価と思われるものはそのむねRemark欄に記した.なお,Dunbarほか(1992)には1853~1963年のイタリアの地震約70個が震度12として載っている.震度12ならば激甚災害が生じたはずであるが,これらの地震はイタリアのカタログ(次項)をはじめ他の世界の地震カタログにも載っておらず,なんらかの誤りと思われる.Gはすべて採録するという方針でこれまで採用してきたが,本表2001年版以降はこれらイタリアの地震に限り採用しないこととした.

○I: Postpischl(1985),Boschiほか(2000) その他イタリアの地震に関するイタリアの文献.
 Postpischl編のカタログは1000年から1980年までのイタリアの地震の発生日時,震央位置,M等が数字で示されているが,被害記事は載っていない.なお,このカタログのMは小さめに決められている感がある.Postpischl編のイタリア地震の震度分布図には被害の記載がある.本表ではPostpischlのカタログからは最大震度9(8~9を含む)以上のものを採用した.震度7~8でも被害があるはずであるが,それを含めるとあまりにも多数になる.実際に被害がなくても,各地の震度からある方式で震央の震度を推定すると7以上になるのかもしれない.ただし,別の資料から,かなりの被害があったことが確かなので採用した地震は,その時刻,震央位置等をこのカタログからとった.ただし以下に記すようにBoschiほか(2000)にあるものはそれに改めた.Carrozzo(1972)のカタログは,999年以前の地震についてのみ参照した.
 Boschiほか(1995, 1997)がまとめていたイタリアの歴史地震カタログの最新版がAnn. Geofis誌にCD-ROMで刊行された(Boschiほか, 2000).関連論文は同誌に印刷されているが,カタログの内容はCD-ROMで特別の閲覧ソフトを使ってみるほかなく,記事はイタリア語なので不便であるが,最大震度9(8~9を含む)の地震および他のカタログからすでに採録されている地震のデータは本カタログによって改訂した.だだし既採録の地震で本カタログに載っていないものも多数ありそれらはもとのままである.載っていないのはその被害地震が存在しないためなのか,史料が少ないためなのかわからない.

○J: 宇佐美(1987,1996),その他日本の地震に関する日本の文献.本表は当初,主に宇佐美(1987)によってつくったが,宇佐美(1996)を参照して増訂した.「大日本地震史料」,「日本地震史料」,「新収日本地震史料」,及び気象要覧,地震月報など気象庁資料等を参照した.歴史地震の震央,Mは宇佐美(1996)による.Mが範囲として与えられているものはM欄には範囲の中央を示し,震央の緯度経度が範囲として与えられている地震もその範囲の中央を示した.なお,データ処理とプリンタの都合から,表中では分数が使えないので,例えば緯度の341/4゜は34.3,Mの63/4は6.8,51/2は5.5としてある.なおごく少数の地震については宇佐美(1996)とはやや異なる震央位置が示されている.

○K: Kondorskaya and Shebalin(1982).この旧ソ連の地震のカタログからは,震央の震度8(7-8を含む)以上の地震,あるいは被害の記事がある地震を採用したが,この震度は震度分布図あるいは震央に近い地点における震度から推定したものである.震度8以上ならば一般には被害がでるはずであるが,実際に被害があったかどうかはわからないものも多い.被害状況は古い地震については簡単に記されているが,近代のものについては記されていない.なお震央が旧ソ連内のものに限らず隣接地域(例えばルーマニア,イラン,日本など)の地震で旧ソ連に影響を与えたものも多数含まれている.

○M: Alsinawiほか(1975, 1985a, 1985b),Berberian(1994),Ben-Menahem(1979),Eiby(1968ab, 1973),Poirierほか(1980ab),Robson(1964),Rothe(1969),その他世界各地域の地震に関する内外の文献.末尾にリストされている文献のほか,1個あるいは少数の地震について記載された論文,単行本等から,本表の基準に合致する地震を採択したほか,既採択の地震についての情報を追加した.

○N: Ceresis(Centro Regional de Seismologia para America del Sur)(1985) Ceresis が1985年に刊行した南米の地震資料で全14巻,第2-9巻が各国の地震カタログ,第11巻は1530-1894年の大地震の史料集である.本表では国別カタログから震度9以上の地震は死傷者不明でも採用,死傷者あり(casualities欄がc)の地震は震度7以上なら採用した.

○P: Papazachos and Comninakis(1982),Comninakis and Papazachos(1982),Papazachosほか(1982).Papazachosほか(1997)などギリシャとその周辺の地震と津波のカタログ.ギリシャの地震についてはギリシャ語の書物(Papazachos and Papazachos, 1989)があるがみていない.

○R: Milne(1911), 理科年表(1961,1974)など.Milne(1911)のカタログはA.D.7年から1899年末までの全世界の被害地震5000個以上を記載したもので,被害を次のようにI~IIIの3等級に分けている.本表には等級IIとIIIのものを採用した.等級Iでも他の文献の資料が基準を越えているため採択されたものがある.なお,日本,中国の地震で本国の資料には被害の記載がないのに,等級IIあるいはIIIとされているものがかなりある.先に述べたようにこれらは採択していない.
  I 壁に割れ目;煙突を壊す.古い建物が壊れたり,小さな地割れができる
 II 屋根がはずれたり,壊れたり 倒れたりする建物が出る.地面が割れたり,小さな地滑りが起こる.
 III 町々を破壊し地域を荒廃させる.地面に断層や地割れができ,水や泥や砂を噴出することがある.
 「理科年表」に1929年から1962年版まで掲載されていた世界大地震年代表の前編は,A.D.17年から1899年までの587個の地震をリストしているが,これはMilne(1911)の表から被害等級IIIのものを抜きだしたものである.1900年以降を対象とした後編は他の文献にない資料が若干ある.1974年版には1900-1972年の世界の大地震の表がある.別の文献から採択した地震はこの表の資料および以後の1986年版までにある毎年の世界の地震の表も参照した.
 Mallet(1850-1853)のカタログは,1606年B.C.から1842年までの数千個の地震の表である(表題は1850年までとなっているが,1843年以降8年分は M. Perreyのカタログが出たので作成をとりやめている).Milne(1911)はこのカタログから多数の地震を採録しているので,これを使えば十分かと思い,このカタログはほとんど用いなかった.しかし,なぜかこのカタログにあってMilneのカタログに含まれていない被害地震も若干ある.

○S: SEAN Bulletin(1980-1988),United States Earthquakes(1943-1977),Significant Earthquakes of the World(1980-2001),BSSA(1911-1994)/SRL(1995-2001).
 SEAN(Scientific Event Alert Network) Bulletin(月刊)には地震の項に世界の被害地震が速報されていた.United States Earthquakesは米国政府刊行物(年刊)で,米国の地震が大部分であるが,USCGS/NOAA/USGSが定めた世界の震源や,主な地震の記事も載っている.Significant Earthquakes of the WorldはUSGSの震源速報(PDE)が扱った地震のうちM≧6.5あるいは被害を伴ったものを1年ごとにまとめたもので1980年以降の分はNEICのサイトで閲覧できる.BSSA(Bulletin of the Seismological Society of America)には毎号Seismological Notes欄に世界の主要な地震の記事が載っている.資料の出所が同じなので,United States Earthquakes,Significant Earthquakesと共通点が多い.1995年以降はこの記事の掲載はSRL(Seismological Research Letters)に移った.

○T: WDC-A(1992)刊行の世界の津波のカタログ(2000B.C.-1900)(FD2枚)

○U: Coffman, von Hake, and Stover(1982).Coffman et al.編の米国の地震史.初版は1928年刊.米国を9地域に分け顕著な地震(震度5以上)をリストした表と主要な地震についての記事が載っている.米国の地震は震度7でも被害があり,地震学上引用されることも多いので採録した.

○V: Karnik(1969,1971).Karnik(1969)の本は 1901-1955年にヨーロッパに起こり最大震度6以上またはM4.5以上を記録した地震のカタログが2/3を占めている.被害に関する記載はない.Karnik(1971)は1800-1900年のヨーロッパにおける震度7以上の地震のカタログで,推定震央位置,被害状況も記載されている.本表では震央の震度が9(8-9を含む)以上の地震を収録したが,1901年以降の地震で他に資料がないものについては被害欄を空欄とした.

3.発生年月日・時刻(YR,MD,HM,UL)
 1582年以前はユリウス暦,以後はグレゴリオ暦が使われているはずであるが,文献によっては混乱がみられ,完全とはいえない.例えば Milne(1911)にある1582年以前の日本の地震はユリウス暦で示されているが,グレゴリオ暦のものも混じっている.他の文献でも,数日おいて同じ地域に二つの地震が記載されており,前のほうをユリウス暦とすると,後のほうがそれに対応するグレゴリオ暦になる場合もある.また,1582年以後も,いくつかの国ではユリウス暦が使われていたので,それが残っている場合があるかもしれない.日本の歴史地震は,1582年以前もグレゴリオ暦で示されるのがふつうであるが,ここではユリウス暦に直してある.従って 「理科年表」 などにある日付と1~10日違っている(表2参照).

表2.グレゴリオ暦に直すためユリウス暦に足すべき日数
ユリウス暦で 300年2月29日 ~ 500年2月28日1日
500年2月29日 ~ 600年2月28日2日
600年2月29日 ~ 700年2月28日3日
700年2月29日 ~ 900年2月28日4日
900年2月29日 ~ 1000年2月28日5日
1000年2月29日 ~ 1100年2月28日6日
1100年2月29日 ~ 1300年2月28日7日
1300年2月29日 ~ 1400年2月28日8日
1400年2月29日 ~ 1500年2月28日9日
1500年2月29日 ~ 1700年2月28日10日

 U はU.T.(世界時),L は現地の地方時を示す.U を採用していると称するカタログ(例えばWDC-Aのカタログ)でも,日付までしか記載されていないもののほとんどすべては,実際は L による日付であろう.本表ではU,Lを区別せず時間の数字の順に配列されているので,数時間以内に二つの地震があり,一方はU,他方はLで記されているときは発生時間順になっていない場合がある.
 WDC-Aのカタログでは時分がわからないものの時分は 0000 となっており,ほんとうに0時0分に起こった(あるいは古い地震で0時ころ起こったとされている)地震と判別できない.WDC-Aのカタログで時分が 0000 のものはすべて時分不明の扱いになっている.本表では発生時分が不明の地震は,ファイル上では時分を 0 とし,本当に0時0分に起こった地震(日本や中国の歴史地震で子の刻に起こったものを含む)はファイルには -0時01分 として記入してあるので,表示・印刷の際に0 00になるようプログラムを作る必要がある.
 WDC-Aのカタログではイラン,イラク,シリアなどイスラム諸国の歴史地震30個以上の発生日が,長年使われていたイスラム暦 Hegira(Hejira,Hijra)(A.H.と記すのがふつうであるが本表では H と記す)の元日に対応する西暦年月日である.このように多数の大地震が元日に起こったとは考えられないので,本当は H の何年ということしかわかっていない地震の発生日をそのように表したものらしい.この状況はSiebergカタログにもみられる.本表ではそのようなものについては,その旨を備考欄に記載し日付は出典とおりにしてある.例えば Ganse and Nelsonにある1149年5月11日イラクの地震は,544H(1149/5/11~1150/4/29)の元日に当たるので,備考欄には(544Hの元日)と付記した.1150年4月にイラクに地震があったという別の資料があるので,この地震がそれと同じものである可能性があるので,(1150/4か)と付記してある.この他,イスラム暦のある月の初日に当る西暦年月日の地震もいくつかある.例えば 856年12月3日イランの地震は242Hの8月1日に当るが,別記の8月13日の地震と同じものかもしれない.
 Hによる年のほとんどは西暦の2年にまたがっているので,Hの何年ということしかわからない地震は通常その前部が対応する西暦の年として登録してある.
 中国の地震で太陰暦の年月までしかわかっていない場合は,その月の初日を含む西暦の月を発生月欄に掲げ,備考欄に旧暦に対応する西暦の月を示した.例えば,明の嘉靖13年12月の江蘇貴池の地震は1535年1月4日~2月1日に対応するので 1535 1 - とし,備考欄に(1-2月)と記した.なお,顧ほか(1983)ではこのような場合,1535.1.-としている.(なお,貴池は現在は安徽省に属し,江蘇省ではないが,本表では安徽と直していない.また,顧ほか(1983,p.883)では1531となっているが,これは明らかに誤植であり,1531年の地震として記載はしていない.)
   中国の歴史地震で発生年しかわかっていない場合は,その年の大部分が対応する西暦年を示した.従ってその記載された西暦年の前年の暮れ近くに起こった可能性も小さいながら存在する.
 1872年以前の日本における遠地津波の日付は,津波が日本に襲来した日であるが,それ以後については地震の発生日時である.

4.緯度・経度・深さ・マグニチュード(LAT,LONG,DEP,MAG)
 ほとんどの場合が出典欄に示す最初の文献に記載されている値で,同種のものに統一されていない.近年のものは器械観測による震源位置・Mであるが,歴史地震については被害や震度分布から推定したものである.緯度・経度のマイナスは,それぞれ南緯・西経を表す.なお,大きな被害を伴った地震であるが,出典に震央位置の記載がないものについては,編者が大略の緯度・経度を与えたものもある(原ファイルで深さの欄に*印がついている).深さの数字はkm単位,s はshallow,n はnormal,i はintermediate,d はdeepを意味するが,その意味は出典により多少異なる(normalは深さ30km前後の地震の意味で使われることもあるが,本表に取り入れた資料では s と同じ意味で使われているものが多いようである).
 1897~1980年の地震については Abe(1981),Abe and Noguchi(1983a, b),阿部(私信)によるMsまたはmBを備考欄末尾にSまたはBを添えて示した.1904~1980年の地震で,MsまたはmBが示されていないものは6.9以下の地震とみてよい.出典 G のMの中には過大と思われるもの(Dudaカタログからとったものなど)があるので注意してほしい.また,Mwの値が与えられている地震については,その値を備考欄末尾にWを添えて記した.MwはHarvardグルプのCMT解カタログにあるMoから換算したものがある場合それを採用している.なお,1981年以降の地震で備考欄にSを添えて示す値はUSGSのMsであり,1980年以前のMsとは違う.MAG欄の値にUSGSの値を採用する場合(出典S)はMsを優先しMsがない場合伊のみmbを用いる.
 なお緯度経度,Mが与えられていない場合はそのファイルのその欄は0になっているので,印刷するときは空欄または-にする必要がある.深さは文字データとしているので不明のときファイルは空欄になっている.

5.津波 (T)
 この欄に T とあるものは津波があったという記録がある.津波による被害があったとは限らないが19世紀以前ものは,被害があったものが多いだろう. 日本の地震で t とあるものは,波高数十cm以下の弱い無被害の津波を意味する.

6.死者数・負傷者数(DEAD,INJURED)
 死者数および負傷者数欄で100s,1000s,... は数百人,数千人,... を意味する.some は死(傷)者があったが数についての情報がない場合(非常に多数の場合はその旨の記載があるのがふつうなので,それほど多数ではない場合が多いだろう),あるいは出典にsome(それに相当する語句)と書かれている場合である.- は不明(記載なし)でゼロとは限らない.ゼロとわかったものは 0 としてある.なお,100人以上,100余人,少なくとも100人,約100人などの場合も100となっている.ちょうど100人の場合と区別できないがスペースの都合でやむをえない.死者数には原則として行方不明者数も含む.
 死(傷)者数は出典によりまちまちで,十倍以上違うことがある.どれを採用すべきか迷うが,この欄にはなんらかの理由で適当と思われるものを記し,ほかの資料は備考欄にスペースの許すかぎり載せた.たとえばある地震について死者8,000人,40,000人,80,000人,250,000人とする文献があり,40000を死者数欄に示したときは備考欄にD=8千/8万/25万と記した(負傷者数はHで示した).

7.被害(DAM)
 日本で被害が出た地震については,日本における被害(その地震が外国にもたらした被害は含まない)を次のD1からD7までの7階級により示す.
 D1: 壁や地面に亀裂が生じる程度の微小被害.
 D2: 家屋の破損・道路の損壊などが生じる程度の小被害.
 D3: 複数の死者あるいは複数の全壊家屋が生じる程度,ただしD4には達しない.
 D4: 死者20人以上または全壊家屋1000以上,ただしD5には達しない.
 D5: 死者200人以上または全壊家屋10000以上,ただしD6には達しない.
 D6: 死者2000人以上または全壊家屋10万以上,ただしD7には達しない.
 D7: 死者20000人以上または全壊家屋100万以上.
 DX: 被害あったが程度がわからないもの,または被害があったと思われるもの.
 DY: 同じ地域に直前または直後に起こった地震の被害と一緒になり,その地
   震の被害のみを取り出して程度を示すことが難しいもので,直前
   または直後の地震の被害に含まれている.この記号は外国の地震につい
   ても使っている.
 日本以外の地震については limi,seve 等(後記参照)によって被害の程度を示しているが,用い方は統一されておらず基準もあいまいである,見直す必要があるが2002年版でもそのままになっている.ただし新たに追加した地震ではこの欄が空欄のままのものもある.この表記はGanse and Nelson(1981)に始まったもので,それにあるものはそのまま転記してある.これは物的被害額によって分けており,被害額が数字で示されているものもあるが,本表では文字で置き換えた.たいした被害がないと思われるものがsevereやextremeになっていたり,多数の死者が出たものがlimitedやunknown,あるいは空欄になっていたり,常識と合致しないものもあるから注意を要する.Milne(1911)から採った場合は,被害等級IIIをsevereで,IIをsomeで置き換えた.編者が決めたものは 明確な基準はなく適宜以下の略語を用いた.insiは日本のD1-2,limiはD2-3,modeはD3-4,consはD4-5,seveはD5-6,extrはD6-7程度であろう.文献の被害記事が短く,被害の程度がよくわからない場合もsomeとしたので,someは幅が広い.D1-4程度とみてよいだろうが,古い地震ではさらに大きな被害のものもあるかも知れない.
 - = unknown(被害があったと思われるが,詳細は不明.Gが出典の場合は多数の死者があってもunknownまたは空欄となっているものがある),some(ある程度の被害があったが,その程度が不明),
 unkn = unknown, insi = insignificant or slight, limi = limited or minor, mode = moderate, cons = considerable, seve = severe or heavy, extr = extreme or catastrophic

7.備考(REMARKS)
 1872年12月2日以前の日本の地震については日本暦による日付を示した.それ以後は西暦と同じ太陽暦が使われているので対応は表3によればよい.日本以外の地震は通常最初に国名,コロンの後に主な地名(市町村名,または地方名)を示したが,出典によってはそうできなかった場合もある.地名は出典にあるものを記したがスペースが足りない場合は適宜省略してある.多くの場合,主な被災地を意味している.しかし明治以降の日本の地震については震源地(震央の地名)であり,外国の地震でも近年の地震の一部は被災地ではなく震源地である.国については現在の国名と国境線を用いるよう心がけた.国名は必ずしも正式の名(の英語表記)ではない.国名,地名の綴りは出典によりまちまちで統一は困難であるが,ファイル検索のため,できるだけ米語綴りで統一してある(表4と5参照).中国の地名でJIS漢字コード表にない漢字は下線付き空欄 _ になっている.中国で現在使われている字体が日本の字体にないが,旧字体はある場合はそれを使っている.USAの地震は原則として州名を括弧に入れて示してある.インドネシア,フィリピンのように多くの島からなる国では国名の次に括弧に入れて島名を示してある.検索は地域名でも可能な場合(例えばKamchatka, 台湾,California(Califで検索する))もあるが,例えば Asia Minor, Balkan, Caribbean, Caucasus, Great Britain, Greater Antilles, Hindu Kush, Scandinavia, Siberia, Sunda, West Indies などではできない(不完全な結果しか出ない).また,例えば Peruで検索するとイタリアのPerugiaもでてくるし,Antigua(国名)で検索すると同名のグァテマラの都市もでてくる.
 一部の地震については,最大震度または震央における震度(推定の場合もある)Iが(I=9)のように記されている.このIはMM震度階あるいはそれと類似の12階級の震度階(MCS震度階,MSK震度階,中国や旧ソ連でつくられた震度階など)である.
 古い地震で(3/5にも)などの付記がしてあるものは,同年3月5日にも同じ地域に被害を伴った(かもしれない)地震があったが,被害軽微あるいは資料が乏しくよくわからないなどのため別の行に示すことは見送ったものである.(3/5か?)などはこの地震の正しい発生日が3月5日である可能性が多少なりともあることを示す.  地地震の名称は[・・EQ]のように示した.近年の日本の地震で気象庁が命名したものはそれを採用したが,発生年は省略してある.
 断層と記したものは地表に地震断層が現れた地震である.
 D=,H=の後の数字はDead欄,Injured欄に示した数字とは別の資料から採った死者数,負傷者数である.
 末尾の7.5S,7.0B,5.5WなどマグニチュードについてはM欄の説明を参照のこと.M欄の値と大きく違うときには,マグニチュードとしてはこれらを用いるほうがよい.

表3.西歴との対応
明治
1
1868明治
30
1897大正
1
1912昭和
1
1926昭和
30
1955 昭和
60
1985
101877401907101921101935401965 631988
201887441911141925201945501975平成 11989


表4.同じ場所にいくつかの名前・綴りが使われる例: 本表では最初(左端)のものを採用
Aleppo = Halab
Alma-Ata = Vernyi = Verny
Antakya = Antioch = Antiochia = Antiochea
Athens = Athinai = Athenae
Azerbaijan = Azerbaidzhan
Baghdad = Bagdad
Beirut = Beyrouth
Belgrade = Beograd
Bucharest = Bucuresti
Cephalonia = Kefallinia = Cephallenia
Corfu = Korfu = Kerkyra = Kerkira = Corcyra
Corinth = Korinthos = Corinthia
Cyprus = Kypros
Crete = Kriti = Creta = Island of Candia
Damascus = Damas = Dimashq
Dubrovnik = Ragusa
Durres = Durrazzo = Epidamnus = Dyrrhachiuim
El Asnam = Orleanville
Erzurum = Erzerum
Erzincan = Erzinjan = Erzingan
Firenze = Florence
Georgia = Gruzia
Ghir = Qir
Gurgan = Gorgan = Asterabad
Hawaii = Sandwich Is.
Iraklion = Heraklion = Heraclum = Candia
Istanbul = Constantinople
Izmir = Smyrna
Izmit = Kocaeli = Astacus = Nicomedia
Iznik = Nicaea = Nice
Khios = Chios
Khoi = Choi = Khvoy
Khorasan = Khurasan = Khorassan = Kourasan
Kirovabad = Gandzha = Gandja = Ganza = Yelizavetpol
Kos = Cos
Kyrgyzstan = Kirghiz(ia)
Latakia = Laodicea = Al Ladhiqiyah
Leninakan = Alexandropol
Lesbos = Lesvos = Mytilene = Mitilini
Levkas = Leukas = Leucadia = Santa Maura
Naples = Napoli = Neapolis
Netherlands = Holland
Neyshabur = Nish
Palmyra = Tadmor
Qeshm = Qishm = Kishm
Quchan = Kuchan
Ramla = Er Ramle = Ram
Raoul Is. = Sunday Is.
Rhodes = Rhodos = Rhodhos = Rhodud = Rodos
Romania = Rumania = Roumania
Rome = Roma
Sidon = Saida
Sulawesi = Celebes
Tajikistan = Tadzhik
Tbilisi = Tiflis
Tripoli = Tripolis = Tarabulus =Trablous
Tyre = Sour = Sur = Tyrus
Ukraine = Ukraina
Venezia = Venetia = Venice
Vienna = Wien
Vlore = Vlona = Valona = Avlona = Aulon
Yerevan = Erevan = Erivan
Zakinthos = Zacynthus = Zante

表5.本表で使っている国名の綴り
Afghanistan, Albania, Algeria, Antigua, Argentina, Armenia, Australia, Austria, Azerbaijan, Bahamas, Bahrain, Bangladesh, Barbados, Belgium, Belize, Bolivia, Bosnia-Herzegovina, Brazil, Bulgaria, Cameroon, Canada, Cape Verde, Central Africa, Chile, China, Colombia, Costa Rica, Croatia, Cuba, Cyprus, Czech, Denmark, Dominica, Ecuador, Egypt, El Salvador, Ethiopia, Fiji, France, Gabon, Georgia, Germany, Ghana, Greece, Grenada, Guatemala, Guinea, Guyana, Haiti, Honduras, Hungary, Iceland, India, Indonesia, Iran, Iraq, Ireland, Israel, Italy, Ivory Coast, Jamaica, Japan, Jordan, Kazakhstan, Kenya, Korea, Kyrgyzstan, Lebanon, Libya, Macedonia, Madagascar, Malawi, Malaysia, Malta, Mexico, Mongolia, Morocco, Myanmar, Nepal, Netherlands, New Zealand, Nicaragua, Norway, Oman, Pakistan, Panama, Papua New Guinia, Paraguay, Peru, Philippines, Poland, Portugal, Puerto Rico, Romania, Russia, Samoa, Saudi Arabia, Slovakia, Slovenia, Solomon Is., South Africa, Spain, St. Lucia, St. Vincent, Sudan, Sweden, Switzerland, Syria, Tajikistan, Tanzania, Thai, Togo, Tonga, Trinidad, Tunisia, Turkey, Turkmenistan, UK, USA, Uganda, Ukraine, Uzbekistan, Vanuatu , Venezuela , Yemen, Yugoslavia, Zaire, Zambia, Zimbabwe
 Lesser Antilles は次の島(国または属領)を含む: Antigua, Barbados, Grenada, Guadeloupe, Martinique, Nevis, St. Christopher, St. Kitts, St. Lucia, St. Vincentなど.